ゆめを泣かしちゃったことは実はそれなりにある。

 初めてはゆめを助けた時だけど、そういういい意味でじゃなくて悪い意味で。

 あ、もちろんそれはいじめたとかそういう悪い意味じゃない。……まぁ、はじめての時とかとんでもないことさせて泣かせたりもしたけど、とにかくゆめの嫌がることで泣かせちゃったわけじゃなくてちょっと色々やりすぎちゃったとかで泣かせちゃうこともあるの。

 そんなたまにの一番初めのときは……

 

 

 大分ゆめと仲良くなってきた中二の夏。

 毎日やってられないほど暑くて、クーラーもない教室で授業を受けてるだけでも汗をかいちゃうような日々。ほんとーに女の子にはつらい季節だけど、クーラーなんてなくても涼しくなれる唯一の授業がある。

 それはもちろん、

「ねー、ゆめ早く着替えに行こう」

 プールの授業だ。

 一時間目の授業が終わった休み時間。あたしは早速水着を持ってゆめの席に行った。体を動かすのが好きなあたしとしては、プールは楽しみな時間。早く行ったところで早く入れるわけじゃないけど。

「……ちょっと、待ってて」

 あたしが準備万端で誘いに来たというのにゆめは、のろのろとさっきの授業の教科書をしまって

「ん? 何やってるの?」

 さらにはなぜか他の教科のノートやら教科書を机から取り出した。

「……次の準備。プールの後は遅くなっちゃうから」

「えー、そんなの後でいいじゃん。つか、プールに遅れちゃうし。着替えなきゃいけないんだからさ」

「……別に私は着替える必要ない」

「え?」

 昔は、こんな会話をしたことはある。そう数年くらい前までなら。

「…………」

 あたしはある心あたりを感じながら次の次の授業の準備を進めるゆめを見つめる。

「……もしかして、水着着てきてるの?」

 ようやく準備を終え、着替えの入ったバッグを持って立ち上がったゆめにそう尋ねる。

「……うん」

 うわ、ほんとなんだ。

「いやいや、それやるの小学生まででしょ。まぁ、ゆめは小学生みたいだけど、変な冗談言わないの」

 あたしは別に本気で疑ったわけじゃない。話の流れ的にそう言っただけ。

「…………」

 ただ、ゆめはちょっとむっと来たらしい。小さいというのは多少なりとも気にしてるみたいだから。

 だから、こんなこと言っちゃったのかな。

「……嘘だと思うなら確かめてみればいい」

 言って、ゆめは制服に手をかけたけど、あたしはその前のセリフを聞いた時点で

「え、じゃあ……」

 ゆめの前にしゃがみ込むと

「遠慮なく」

 スカートをめくってその中を覗き込んだ。

「ふぇ!!!??」

 衆人環視のある前で。

「ほうほう」

 ゆめや周りのクラスメイト達がびっくりしてるのにも気づかずあたしは、スカートをもとに戻すと

「はぁ、なるほどなるほど。いいもの見させてもらいました」

『!!!??』

 クラス中に誤解を招きかねない一言を言ってしまう。

(中学生にもなって、スカートの下が水着っていうのもなかなか見れないものだろうしね。あー、でもワンピース型の制服だったらお腹あたりまで見れてさらによかったかも)

 なんて、あたしはのんきなことを考えていると

「っ!!!?」

 頭に強い衝撃を受けた。

「った!? なにすんの!!」

 殴られたことが分かったあたしは驚いてゆめの見上げると

「っひっく……ぅぅ」

 瞳いっぱいに涙をため、顔を真っ赤にしているゆめの姿があった。

「……ばかぁ」

(うわ、可愛い)

むちゃくちゃ怒らせちゃってるのにも気づかずあたしは、初めて泣かせちゃったゆめの顔にそんなことを思うのだった。

 

 

 これが、ゆめを初めて泣かせちゃったときのこと。この日は結局一日中あたしと話してくれることはなかったし、なんかクラスのみんなにも大分警戒されちゃったし、噂っていうのは早いもので当然もう一人の親友の耳にも入っちゃうわけだけど、それはまた別の話。

 

 

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 彩音のお話を書いていてやりすぎちゃったなぁと思うことは結構ありますけど……これはひどいですねw すみませんでした。 あ、ちなみにゆめは制服をめくってお腹を見せようとしただけです。

 ……にしても、彩音がこういうことばっかりだと、現在の時間軸でもっと色々した方がいいのかなとも考えてしまいますね。とはいえ、彩音はこういうギリギリ感のほうが会ってるような気もするし……まぁどこかギリギリだってこともありますけど。もうちょっと色々悩んでみます。もし、ご意見などありましたらお気軽にどうぞ。なんてこんなところでちょっと書いてみました。

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